この事例の依頼主
80代以上 女性
被害者である高齢女性が、自転車で道路を走行していたところ、信号機のない交差点で、自動車に衝突されました。その女性は、体がボンネットに乗った後、フロントガラスに衝突し、路上に転落しました。その際、頭を強く打って、脳挫傷等の傷害を負い、病院での治療後、高次脳機能障害の後遺障害(後遺障害等級2級)が残りました。加害者は、当初被害者の自転車が急に飛び出してきたと主張しました。その言い分が通ったことから、検察官による刑事処分は不起訴(無罪)になりました。加害者は、自分に過失はない(被害者過失100%、加害者過失0%)と主張しました。この後、当職は被害者とその家族から相談を受け受任しました。
まず、当職は検察庁に行って、実況見分調書(交通事故現場見取図)とそれに添付されている写真をコピーしました。交通事故現場見取図を見た瞬間、無罪はおかしいと感じ、当職は、交通事故現場に行き、現場周辺を調べました。事故現場周辺は、遠くまで見通しが良く、自動車から見て自転車が急に飛び出して来たということはあり得ないと思い、自動車の運転手の前方注視義務違反は明らかであると考えました。そこで、当職は検察審査会に申立てをしました。(検察審査会とは、検察官が加害者を起訴しなかったことがよかったのかどうかを20歳以上で選挙権を有する国民の中からクジで選ばれた11人の審査員が審査する制度です。)当職は、「交通事故現場周辺は、遠くまで見通しが良く、自動車から見て自転車が急に飛び出して来たということはあり得ない。自動車の運転手の前方注視義務違反は明らかであるから、起訴相当である。」と主張しました。検察審査会で審査された結果、加害者に対し起訴相当との判断がなされました。その後、検察庁で再度取調べが行われ、加害者には過失があるとされ、罰金刑になりました。これは、被害者にとっては、重大なことです。加害者が罰金刑でも有罪になると、実況見分調書以外の刑事記録もコピーできます。その後、地方裁判所に訴訟を起こしました。過失相殺を主要な争点として1年以上争いました。そして、約1年3月後に判決がなされました。判決では、加害者の過失が80%(被害者の過失20%)と認定されました。被害者はかなり高齢の方ではありましたが、自賠責保険金と判決で認められた金額の合計で約4500万円の損害賠償金を得ることができました。
被害者は、交通事故で強く頭を打ったことから、脳挫傷などにより事故当時の記憶がないことが多く、加害者が勝手な主張をすることが有ります。被害者は、加害者が警察で何を主張しているか分りません。警察の供述調書で「加害者の処罰を求めません」などと書いてはいけません。そのような書面に署名押印してはいけません。頭部外傷の被害者のご家族は、事故が起きたら直ぐに無料法律相談を受けていただきたいと思います。