11751.jpg
AV出演強要、未だに続く被害を本気で止めろ! 業界の取り組みに「成果」と「限界」
2020年01月01日 09時44分

「タレントにならない?」「モデルにならない?」とスカウトされて、プロダクションと契約したところ、アダルトビデオへの出演を余儀なくされる――。

若い女性が望まぬかたちでアダルトビデオへの出演を迫られる「AV出演強要」が、大きくクローズアップされてから、4年近くの歳月が流れた。

この間、AV業界内の自主的な取り組みもはじまったが、被害者の支援団体が提案しているような法規制は、議論も含めてすすんでいない。

業界内外の関係者から嘆息も聞こえてくる。現在、どんな状況にあるのか。これまでの動きを簡単にまとめた。

「タレントにならない?」「モデルにならない?」とスカウトされて、プロダクションと契約したところ、アダルトビデオへの出演を余儀なくされる――。

若い女性が望まぬかたちでアダルトビデオへの出演を迫られる「AV出演強要」が、大きくクローズアップされてから、4年近くの歳月が流れた。

この間、AV業界内の自主的な取り組みもはじまったが、被害者の支援団体が提案しているような法規制は、議論も含めてすすんでいない。

業界内外の関係者から嘆息も聞こえてくる。現在、どんな状況にあるのか。これまでの動きを簡単にまとめた。

●2016年3月、調査報告書発表

ヒューマンライツ・ナウの報告書 ヒューマンライツ・ナウの報告書

NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)が2016年3月、AV出演強要の被害実態をまとめた調査報告書を公表した(http://hrn.or.jp/news/6600/)。

暴力的な撮影がおこなわれたケースや、AV業界から長年ぬけ出すことができないケース、自殺に追い込まれたケースなどが記されている。

この報告書をめぐっては、現役AV女優など業界関係者から、反発する声があいついだ。一方で、メディアで顔をさらして、被害告白する人たちもあらわれた。

こうした状況を受けて、元AV女優の作家が、業界の健全化をうながす団体を設立するなど、業界内の動きもはじまった。

●AV業界の自主的な取り組みがおこなわれている

AV人権倫理機構の志田陽子代表 AV人権倫理機構の志田陽子代表(2017年4月17日/弁護士ドットコム撮影)

「重大な人権侵害だ」(菅義偉官房長官)。政府は2017年3月、街中で女性に声をかける「スカウト」に対する取り締まりを強化するなど、AV出演強要に関する緊急対策をまとめた。

一方、AV業界では、有識者でつくる「AV業界改革推進有識者委員会」(現、AV人権倫理機構)が2017年4月発足して、改善に向けた自主的なスキームを立ち上げた。

同機構は2018年2月から、AV作品の販売停止の手続きをスタートさせた。2019年11月末までに、1万13作品の申請があり、8570作品が販売停止されている。

こうした販売停止などの取り組みは、被害者の支援団体から「一定の成果がある」という評価もされているが、根本的な「被害の防止」につながっていないと批判もされている。

●職業安定法で有罪判決になったケースも

東京地裁 東京地裁(YNS/PIXTA)

AV出演強要をめぐっては、労働者派遣法や職業安定法の適用によって、摘発されるケースがある。およそ1年前のクリスマスの日(12月25日)、注目の判決もあった。

大手AV制作会社に、当時19歳だった女性を紹介して雇用させたとして、職業安定法違反の罪に問われた男性について、東京地裁は、懲役1年6月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。

男性は、スカウトと共謀して、AVに出演させる目的でモデル志望の女性と面接した。大手AV制作会社に、女性を紹介して雇用させたとして、職業安定法違反(有害業務の紹介)の罪に問われた。

東京地裁は、女性とAV制作会社との間で雇用関係があったなどとして、職業紹介にあたると認定した。さらに、男性がマネジメント契約の締結に重要な役割を果たしたと判断した。

●いまだに被害はつづいている

被害者の支援団体によると、いまだに被害はつづいている。スカウトだけでなく、パーツモデルの求人サイトに応募したことがきっかけの被害もあるという。

ヒューマンライツ・ナウなど、3団体はことし12月、AV出演強要の被害実態を報告する院内集会を開いて、AV出演に関する相談件数が39件だったと発表した(1月〜11月)。

ヒューマンライツ・ナウは、(1)監督官庁の設置、(2)労働者派遣法や職業安定法違反の厳格な適用、(3)真実を告げない勧誘・虚偽広告による勧誘の禁止――などをもとめている。

内閣府・男女共同参画会議の専門調査会が2017年2月、法規制のあり方などについて検討して、報告書をまとめたが、その後、法規制の議論はほとんどおこなわれていない。

一部の社会学者からは、法規制について「慎重論」も出ているが、AV業界の自主的な取り組みには限界もあり、業界内外の関係者から「何も変わっていない」という声も漏れてくる。

さらには、違法アップロードなど、作品が残りつづけるような状況もあり、被害防止以外の観点からもどのような対策がとれるのか、2020年こそ真剣な議論をはじめるべきだろう。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る