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「コスプレ衣装」販売業者が逮捕された!アニメや特撮の衣装の「無断制作」は違法?
2013年10月10日 12時55分

特撮番組に登場するキャラクターの「コスプレ衣装」を販売していた業者が、著作権法違反の疑いで逮捕される事件が起きた。

報道によると、9月下旬に広島県警によって逮捕されたのは、同県の衣料品販売会社の30代役員。逮捕容疑は今年3月から4月にかけて、ネット上のコスプレ衣装専門店で、『海賊戦隊ゴーカイジャー』のキャラクターが着るジャケット4点を、著作権者(東映)の許可を得ずに複製されたと知りながら、3万2000円で売った疑いだという。

衣装は客から注文を受けた後、中国の工場に発注し、製造するシステムだったという。この会社役員は他の社員らと共謀し、複数のネットショップに4000種類以上の衣装を出品し、5年間で約3億円を売り上げていたとみられている。

この「事件」を受け、全国のコスプレイヤーたちには大きな衝撃が走った。キャラクター衣装などの小道具は公式販売されていないことも多く、「本物そっくり」なものを自主製作したり、誰かに作ってもらったりすることは「コスプレ界隈」では数多く行われているからだ。ネットでもさっそく「全体が萎縮しないか心配」といった声があがっている。

今回の事件は、具体的にはどんな点が法律違反とされたのだろうか。コスプレイヤーが自分で、アニメや特撮番組のキャラクター衣装を作るのも犯罪になってしまうのか。著作権法にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。

特撮番組に登場するキャラクターの「コスプレ衣装」を販売していた業者が、著作権法違反の疑いで逮捕される事件が起きた。

報道によると、9月下旬に広島県警によって逮捕されたのは、同県の衣料品販売会社の30代役員。逮捕容疑は今年3月から4月にかけて、ネット上のコスプレ衣装専門店で、『海賊戦隊ゴーカイジャー』のキャラクターが着るジャケット4点を、著作権者(東映)の許可を得ずに複製されたと知りながら、3万2000円で売った疑いだという。

衣装は客から注文を受けた後、中国の工場に発注し、製造するシステムだったという。この会社役員は他の社員らと共謀し、複数のネットショップに4000種類以上の衣装を出品し、5年間で約3億円を売り上げていたとみられている。

この「事件」を受け、全国のコスプレイヤーたちには大きな衝撃が走った。キャラクター衣装などの小道具は公式販売されていないことも多く、「本物そっくり」なものを自主製作したり、誰かに作ってもらったりすることは「コスプレ界隈」では数多く行われているからだ。ネットでもさっそく「全体が萎縮しないか心配」といった声があがっている。

今回の事件は、具体的にはどんな点が法律違反とされたのだろうか。コスプレイヤーが自分で、アニメや特撮番組のキャラクター衣装を作るのも犯罪になってしまうのか。著作権法にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。

●「3通りの権利侵害」が考えられる

「まず、(1)特撮番組に登場するキャラクターの衣装をコスプレ衣装として複製した点が、著作権者である東映の《複製権》(著作権法21条)を侵害したという評価が可能です。

また、(2)そのコスプレ衣装を販売した点は、《譲渡権》(26条の2)を侵害したと評価できます。著作権者は、著作物の複製物(本件ですとコスプレ衣装)を、譲渡により公衆に提供することを禁止する権利を与えられているのです。

さらに、譲渡権侵害と重なる部分が大きいのですが、(3)著作権を侵害する行為によって作成された物を、そのことを知りながら譲渡や貸与する行為は著作権侵害とみなされます(113条1項2号)」

今回の件では、著作権法上、この3点が問題となり得るということだ。逮捕された業者の容疑はどれに当てはまるのだろうか?

「本件においては、警察がどの点を捉えて逮捕しているのか、明確ではありません。

ただ、『著作権者(東映)の許可を得ずに複製されたと知りながら、3万2000円で売った疑い』という報道からすると、逮捕容疑は(3)《みなし侵害》の印象を受けます。

本件のコスプレ衣装が複製権を侵害しているのは(1)で述べた通りですが、コスプレ衣装の制作(=複製)そのものは、中国の工場で行なっていたようなので、この業者自体は行っていないのかもしれません」

●コスプレイヤー自身が衣装を作る場合は「私的使用」にあたる

「次に『コスプレイヤーが自分でキャラクター衣装を作る』場合ですが、基本的には著作権法違反にならないと考えていただいて大丈夫です。

著作権法は、『個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは』使用者による複製を認めています(30条1項)。

私的使用の場合、著作権者による許可は要りません。したがって、コスプレイヤーが自分でキャラクター衣装を作ったとしても、複製権侵害として著作権法違反となることはありません」

「ただし」といって、雪丸弁護士は次のように続ける。

「『誰かに作ってもらう場合』は、危険性が生じます。たとえば、自分が所属している、ごく小規模のコスプレサークルのメンバーのために作ってあげるという場合なら、『家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する』という私的使用の範囲内と考えられますが、限界は明確ではありません」

このあたりは、グレーゾーンと言ってよいのだろう。

「なお、『複製の主体はあくまで使用する自分で、実際に作る人は手足に過ぎない』。したがって『法的には使用する者が複製していると評価できる』という理屈も有り得ますが、使用者本人が実際のコスプレ衣装制作作業に全く関与しない以上、なかなか容易には認められないと思われます。

ちなみに同じく《複製権》が問題となった、自炊代行事件判決(平成25年9月30日東京地裁)でも、こういった主張がされましたが、裁判所から否定されています」

●衣装が「著作物」かどうかについては、異論もある

「ところで、ここまでの話は、衣装が著作権法上保護の対象となる著作物に該当することを前提とした内容です。しかし、そもそも衣装が著作物であるかについては、議論があります。衣装のように実用に供される創作物を『応用美術』と言いますが、この応用美術は意匠法で保護されるべきであり、著作権法では保護しないという考えがあるのです。

ただし、応用美術の中でも『一品製作の美術工芸品』については、著作物として保護することにはほぼ争いがありませんので、警察は『このゴーカイジャーの衣装は一品製作の美術工芸品であるから、応用美術の問題は生じない』という判断の上で逮捕に踏み切ったものと思われます。

ひょっとすると今後の弁護活動の中では、弁護人から応用美術の主張がなされるかもしれませんね」

雪丸弁護士はこのように述べていた。コスプレに興味のある人は、ぜひ、この事件の行方に注目していくべきだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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